企業経営者からエンジェル投資家に転身 県内のベンチャー支援に新風を

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 エンジェル投資家という存在をご存知でしょうか。エンジェル投資家とは、創業間もない企業に投資する個人投資家のことで、その多くが元実業家や大手企業の経営者です。資金需要の多いアーリー期のスタートアップ企業に手を差し伸べる存在であるところから、エンジェル(天使)と呼ばれています。ここ数年、都市圏では増えていますが、地方で活動するケースはまだまだ少ないようです。
 
 今回は、企業経営者からエンジェル投資家に転身し、今春より活動を本格始動した、株式会社AMCの山口社長の事例をご紹介します。

 

企業経営者からエンジェル投資家に転身

 
 山口氏は、昭和32年生まれの65歳。株式会社日本エー・エム・シーの社長を22年間務めた後、65歳の区切りを機に、2023年4月よりエンジェル投資家としての活動をはじめました。
 
 山口氏が応援したいのは、ビジネスモデルをもっているスタートアップ企業で、可能性を感じる企業者には、経営のアドバイスはもちろん、「1社あたり100~300万円の出資も積極的に行いたい」と話します。
 
 山口氏が長年社長を務めていた株式会社日本エー・エム・シーは、建設機械向けの高圧配管用金属継手の市場で日本一のシェアを獲得しているニッチトップの会社です。福井、中国、タイ、フィリピンの4カ国5拠点で展開しています。
 

※ホース接続用継手
 

※フィリピン・マニラAMC
 

 山口氏は、一代で事業を築き上げた創業者である父親の跡を継ぎ、さらなるグローバル化と業容拡大を実現。二代目社長として務めた22年の間で、売り上げは20億円から80億円まで拡大しました。後継者が不在であったことから、2022年11月にファンドに株を売却し、その売却益を元手に、2023年4月よりエンジェル投資家に転身しました。
 

第二の人生は「恩送り」をしていきたい

 
 「県内起業家の育成に携わりたいという気持ちは前々からあった」と山口氏。自身が44歳で社長になった当時、取引先であった株式会社小松ゼノアの児嶋会長から、社長としての心構えを徹底的に仕込まれた経験が原体験となり、その後の社長人生に大きな影響を与えたとふり返ります。「社長業の肝は、実際に社長を経験した者にしか伝えられない。恩送りのつもりで、第二の人生は起業家の育成に取り組みたい」と話します。
 

福井から第二第三のパンテスを

 
 山口氏は、当センターが主催するピッチイベント「福井ベンチャーピッチ」にも、聴講者として継続参加しています。第5回福井ベンチャーピッチ(2020年3月)に登壇した、「あん食パン」が看板商品の 株式会社 PANTES365Japan 今井薫社長の発表に成長可能性を感じ、東京に直営店を出す資金を出資されました。山口氏から出資を受けたことを機に、今井社長は都内を中心に多店舗展開し、現在はフランチャイズビジネスに着手されていらっしゃいます。
 
 今井社長はエンジェル投資家としての山口氏の存在について「資金面はもとより、経営のアドバイスや人脈、情報など、あらゆる側面から弊社の発展に力を貸してくださる最高のビジネスパートナー」と話します。
 

※山口社長と今井社長
 

県内のベンチャー支援に新風を

 
 「福井ではエンジェル投資家を名乗って活動する人はまだまだ少ない。企業経営者としてのこれまでの経験を活かして、自分なりの方法で福井のスタートアップ企業を育てていきたい」と意気込む山口氏。
 
 ぜひ山口氏には県内のベンチャー支援に新しい風を巻き起こしていただきたいと思います。
 
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 本記事は、ふくい産業支援センターが発行している情報誌「F-act」に掲載されています。

★情報誌 F-ACT(ファクト)
https://www.fisc.jp/fact/


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岡田 留理(おかだ るり)

公益財団法人ふくい産業支援センター職員。特定社会保険労務士。 開業社労士時代は、中小企業の顧問、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントを経験。2015年にふくい産業支援センターに入職した。 2015年よりふくい創業者育成プロジェクト(現ふくいベンチャー創出プロジェクト)を担当。2017年に「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げ、県内ベンチャー企業の登竜門となるピッチイベントへと成長させる。2018年、近畿経済産業局が取りまとめる関西企業フロントラインにて、関西における「中小企業の頼りになる支援人材」として紹介された。 ★President Onlineに寄稿した記事→http://urx2.nu/pVYq

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