福井県はEC好適地?~上場企業からスーパーニッチまで 成長するベンチャーが育つ理由~

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 こんにちは。ふくい産業支援センターで、福井県のベンチャー支援を担当している岡田です。
 今回は、「なぜ福井県には、ニッチな分野を極めた業界トップクラスのネット通販会社が集積しているのか」について書きました。よろしればご覧ください。

福井にはニッチな領域のネット通販会社が多数

 

 実は福井県は、ニッチな領域的で日本ナンバーワンを目指すネット通販会社が多数存在していることをご存知でしょうか。
 
※ECとは、「インターネット通販」や「ネットショップ」といった言葉を総称したもの

日本のへそに位置し、土地も安い

 
 福井県は、交通アクセスが悪く日本のへき地のような印象を持たれがちですが、実は日本地図で見ると、日本の真ん中にあり、物流にはうってつけの場所です。

 加えて、人口が少なく土地が安いため、広大なスペースが確保しやすいという利点もあります。豊富な在庫を確保でき、日本各地に発送しやすい環境は、ネット通販にはうってつけの立地条件です。

経営者同士で教え合うスタイル

 

 福井県に、ニッチな分野を極めた業界トップクラスのネット通販会社が集積している理由はもう一つあります。ネット通販会社を育てる環境が早い段階から整っていた点です。

 当センターが「ネット通販取引支援」に着手したのは1999年。「県内マーケットの小さい福井県企業にとって、ネット通販は絶対に挑戦すべき新領域だ。」と直感した当センター職員が、試行錯誤で支援に当たったのが始まりでした。

 当時は、インターネットが企業にも広がり始めたものの、多くの経営者はまだネットで物が売れると思っておらず、ネット通販を「子供の遊び」と考えていた時代でした。フロンティア精神旺盛な県内経営者の意見を取り入れながら、支援機関職員が経営者と一緒になって新産業を開拓していく取組みは、地方では前例がなかったそうです。

 こうやって、全国に先駆けてEC機運が盛り上がっていった福井県では、ネット通販を活用したビジネスを行う経営者同士が切磋琢磨し合える絆の強い勉強会も複数存在します。

 たとえば、約120名の経営者や後継者が在籍する「BBR経営塾」(毎回参加者は50名程度)や、約50名以上のネット通販運営者が在籍する「福井インターネット通販研究会(どっと混む福井)」(毎回参加者は30名程度)などです。

 竹やりで戦車に勝つために、スーパーニッチな分野を攻めていく戦略を、経営者同士で教え合うスタイルをとっています。

ユニフォームネクストの上場

 
 福井のネット通販会社の中でも注目を集めたのが、「ユニフォームネクスト株式会社」の上場でした。

 現社長の横井康孝氏が2007年に事業を継いだタイミングで、業務用ユニフォームのネット通販に挑戦。徹底的にターゲットを絞り込んでニッチトップを目指すウェブサイト作り、商品に精通したスタッフによるきめ細やかな電話サポート、巨大な倉庫に豊富な在庫を確保することで可能にした受注から納品までのスピードを強みに、後発ながらも業界トップに躍り出て、マザーズ上場を果たしました。

 当時の福井県は、2007年の前田工繊株式会社以来、10年間上場企業が誕生していませんでした。そんなベンチャー不毛の地で、業務用ユニフォームを扱う従業員3名の会社がネット通販で急成長を遂げ、県内10年ぶりの上場を果たすとは誰も予想していなかったのではないでしょうか。

 これは、ともすると「子供の遊び」と思われがちなネット通販が、繊維や眼鏡、ものづくり企業などと並んで、本県の発展に重要な役割を果たす新産業になる可能性を示した瞬間でもありました。

ピッチイベントには福井発EC企業が多数登壇

 

 当センターでは、2017年以来、福井県内のベンチャー企業の支援に注力しています。それを代表するイベントが、毎年定期開催している福井ベンチャーピッチです。
 毎回、福井発ベンチャー企業4~5社が、投資家やベンチャーキャピタル、大企業の新規事業担当者を前にプレゼンテーションを行います。これまで、計5回開催し、延べ27人のベンチャー企業経営者が登壇しました。

 福井べンチャーピッチには、ネット通販会社も多数登壇しています。

 「おしゃれの教育事業」を強みに急成長を遂げている、メンズアパレルのネット通販会社「株式会社ドラフト」(福井県あわら市)、印刷屋からノベルティ販売に業態転換し、販促品の企画やノベルティ通販サイト『販促花子』を主力に企業の販促を支援する「チャンスメーカー株式会社」(福井県福井市)、エルメスやシャネルなどブランドの革製品の修復に特化した『革修復どっとコム』を運営する「フェニックス株式会社」(福井県福井市)などです。

 いずれの企業もニッチな分野を極めた業界トップクラスのネット通販会社です。

田舎のネガティブをポジティブに変えていく

 
 福井県では、地の利を生かし、ネットとリアルを融合させたビジネスモデルでチャレンジしようとしている次世代ECベンチャーも育ちつつあります。

 当センターでは今後も、知恵と工夫で田舎のネガティブをポジティブに変えていく、フロンティア精神旺盛なECベンチャーを応援していきたいと考えています。
 
 
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ふくい産業支援センターでは、福井発ベンチャー企業をサポートしています。 

○現在募集中のベンチャーイベント

横井康孝氏(ユニフォームネクスト株式会社 代表)によるオンラインセミナー
コロナの今だからこそ考えたい「土台となる戦略と次の一手」


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岡田 留理(おかだ るり)

公益財団法人ふくい産業支援センター職員。特定社会保険労務士。 開業社労士時代は、中小企業の顧問、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントを経験。2015年にふくい産業支援センターに入職した。 2015年よりふくい創業者育成プロジェクト(現ふくいベンチャー創出プロジェクト)を担当。2017年に「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げ、県内ベンチャー企業の登竜門となるピッチイベントへと成長させる。2018年、近畿経済産業局が取りまとめる関西企業フロントラインにて、関西における「中小企業の頼りになる支援人材」として紹介された。 ★President Onlineに寄稿した記事→http://urx2.nu/pVYq

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