福井県におけるベンチャー支援~ふくい産業支援センターの支援事業の現状について

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 公益財団法人ふくい産業支援センター(以下、「当センター」)では、2017年4月にプロジェクトを立ち上げ、独自の企画でベンチャー支援事業を実施しています。
 事業も6年目を迎え、県内のベンチャー機運が高まりを見せている中、他県からお問合せをいただく機会も増えました。

 そこで、本ブログで改めて、当センターが行うベンチャー支援事業の内容を体系的にまとめ、ご紹介したいと思います。
 

※2023年2月に更新しました
更新した記事はこちらをクリックしてご覧ください

 

ベンチャー支援事業を立ち上げた背景

 
 福井県は社長の多い県として有名です。人口10万人当たり「社長輩出率」は1.37%で、38年連続全国1位です。
 地元出身の経営者が多い県である一方で、全国平均に比べて開業率・廃業率がともに低いことも大きな特徴です。

 福井県の上場企業数もまた、開業率と同様に多いわけではありません。県内の上場企業数は、2022年7月現在で15社。記憶に新しい2017年のユニフォームネクスト株式会社(本社福井市)の上場も、県内の企業では前田工繊株式会社(本社坂井市)以来、10年ぶりの新規上場でした。

 つまりこれはどういう状況かというと、福井県の場合は、着実成長を望む後継ぎ経営者が大半で、ベンチャー機運はそれほど盛り上がっていないということです。 

 そこで福井県におけるベンチャー機運を高めるべく、当センターでは、2017 年4月にベンチャー支援事業を新設し、同年10月に県内初のピッチイベント「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げました。 

福井ベンチャーピッチとは 

 
 福井ベンチャーピッチとは、成長意欲の高い県内ベンチャー企業が、投資家や金融機関、事業会社を前に、自社のビジネスをプレゼンテーションするピッチイベントです。

 金融機関やベンチャーキャピタル(VC)などが都市圏や地方都市で開催するケースが多い中で、福井のような田舎で、しかも地元の公的支援機関が単独で、ピッチイベントを継続開催しているのは全国的にも珍しいと言われています。
 

 
 過去7回の登壇企業は36社(延べ38社)に上ります。選考会を通過した登壇企業は、①金融機関やVCとのネットワーキング、②ビジネスモデルのブラッシュアップ、③当センターからの継続的なフォローという3つの支援を通じ、資金調達・事業提携・販路拡大などのチャンスを広げることができます。

 立ち上げ当初は、ビジネスモデルに可能性のある企業を直接訪問してピッチ登壇を呼びかけていました。現在でも、可能性のある経営者に積極的に声をかけるなど、登壇するベンチャー企業登壇者の発掘はもっとも苦労している部分です。ただ、回を重ねるごとに応募者は増えてきており、ここ数年の登壇の選考倍率は2~3倍となっています。

ふくいベンチャー創出プロジェクトとは 

 
 前述のとおり、福井ベンチャーピッチの立ち上げからスタートした本プロジェクトでしたが、県内ベンチャー企業の成長に合わせて肉付けしていく形で、支援メニューを少しずつ増やし、バージョンアップさせています。

 ふり返ると、事業の4年目頃から、登壇企業の中から具体的な上場準備に入る企業が複数社現われ始めたことが、事業見直しの大きなきっかけになったように思います。

 2022年7月現在は、支援フェーズを大きく5つに分けてプログラムを組んでいます。
 事業名にそれぞれ報告ブログのリンクを貼っています。よろしければ青色になっている文字をクリックしてご覧ください。

① 機運の醸成
◆「ふくいベンチャー創出セミナー」
 (定期開催:年1回)

 ※令和3年度開催報告ブログ
◆勉強会・ワークショップ
 (開催:不定期)

◆個別相談窓口
 (定期開催:月2回)

 ※ベンチャー相談窓口紹介ページ

② 企業の発掘
◆担当職員による個別ヒアリング
 (随時)

③ 企業の育成
◆「福井ベンチャーピッチ」
 (定期開催:年1回)

 ※第7回開催報告ブログ
 ※第8回登壇者募集ページ
◆「U29限定NEXTベンチャーイベント」
 (開催:年1回)

 ※令和3年度開催報告ブログ

④ 育成後のフォローアップ
◆「福井ベンチャー塾」
 (定期開催:2ヶ月に1回)

 ※令和3年度開催報告ブログ
◆県内外VC等による個別面談
 (随時)

⑤ 上場支援
◆「福井ベンチャー塾」
 (定期開催:2ヶ月に1回)

 ※令和3年度開催報告ブログ
◆「成長支援メンタリングプログラム」
 (開催:年1回)

 ※令和3年度開催報告ブログ
◆県内外VC等による個別面談
 (随時)

 

 

年々高まる県内のベンチャー機運

 
 おかげさまで、県内におけるベンチャー機運は年々高まりを見せています。
 2021年7月に開催した第7回福井ベンチャーピッチでは、ベンチャーキャピタル、金融機関、事業会社等、約260名のベンチャー支援者にご聴講いただきました。聴講者数は、第1回開催時から約2.9倍に増えました。

 第7回開催時には、杉本福井県知事にもご出席いただきました。ベンチャーイベントに県知事自ら登壇し、ご自身の言葉で、地元上場企業の社長(ユニフォームネクスト横井社長)と闊達な意見交換をされる様子は、県内外から大きな反響を呼びました。

 

 

第7回開催時のオープニングセッションの様子
 

 2022年6月に開催したふくいベンチャー創出セミナーでは、県内企業経営者を中心に453名の方にご参加いただきました。参加者数は、2019年時から約6.7倍に増えました。

 特別講師としてご登壇いただいた、株式会社スノーピークの山井太会長が、「地方のベンチャーセミナーでここまで盛り上がっている県は見たことがない」と驚くほどの盛況ぶりでした。

 


 

ふくいベンチャー創出セミナーの様子
 

最大の特徴は「ベンチャー支援の内製化」

 
 当センター事業の特徴は、「ベンチャー支援の内製化」にとことんこだわり、実行している点だと思います。

 地元上場企業社長(ユニフォームネクスト 横井社長)を本プロジェクトのメンターに置き、担当者であるセンター職員が地域のベンチャーエコシステムのハブとなって、ベンチャー企業の発掘から上場までを一気通貫で伴走支援しています。
 

福井ベンチャー塾の様子
 

 事業の企画・運営のすべてを独自で行うことは、「外的要因の影響を受けにくく、安定した支援体制を築ける」「ベンチャー企業のニーズを即座に支援メニューに反映できる」など、利点がたいへん多いです。

 また、地域のベンチャーエコシステムを最大限に生かすことをベースにプログラムを構成しているため、先輩起業家が若手起業家を育成するという好循環も新たに生まれています。

担当者のつぶやき

 
 地方におけるベンチャー支援施策といえば、「(ノウハウや経験や人脈が十分に無いから)まずはノウハウをもつ経験豊富な都会のコンサルタントに外注に出す」というのが一般的な印象です。

 しかし、5~10年という中長期的視点から見てみると、「(ノウハウも経験も人脈も十分に無くとも)立ち上がりの段階から地域が主体となってベンチャー支援に挑戦する」方が、じわじわと後から効いてくるのではないかと私は思います。

 もちろん、何が正しいと言い切れるものはなく、当センターのやり方が必ずしも他県にハマるともわかりませんが、少なくとも、福井県ではこの内製化モデルで少しずつベンチャー機運が高まっているということで、このようなブログを書かせていただきました!


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岡田 留理(おかだ るり)

公益財団法人ふくい産業支援センター職員。特定社会保険労務士。 開業社労士時代は、中小企業の顧問、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントを経験。2015年にふくい産業支援センターに入職した。 2015年よりふくい創業者育成プロジェクト(現ふくいベンチャー創出プロジェクト)を担当。2017年に「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げ、県内ベンチャー企業の登竜門となるピッチイベントへと成長させる。2018年、近畿経済産業局が取りまとめる関西企業フロントラインにて、関西における「中小企業の頼りになる支援人材」として紹介された。 ★President Onlineに寄稿した記事→http://urx2.nu/pVYq

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